自筆証書遺言が、法務局で保管してもらえるようになる
相続法では、遺言制度に関する各種の規定も改正されています。その1つは、「遺贈義務者の引渡義務に関する責任の限定化」です。
相続に際して故人からの遺贈があった場合、遺贈を実行すべき義務を負う人(遺贈義務者)は、遺贈する物や権利を、「相続が開始した時点の状態」で引き渡し、移転すればよいことになりました。
また、「遺言執行者の権限」も明確化されています。遺言執行者は文字どおり「遺言を執行する人」のことですが、法律上その権限が明確には定められていませんでした。
そのため、遺言執行者と相続人との間で利益が対立する場合には、トラブルに発展することもありました。
そのようなこともあり、遺言執行者の権限について明確化されています。
これら以外にも遺言制度についていくつか改正が行われていますが、故人の生前もしくは相続人にとって直接的な影響が大きいのが、「自筆証書遺言に関する保管制度」の創設です。
法務局で遺言書を保管してもらう
遺言は主に、①自筆証書遺言②公正証書遺言③秘密証書遺言の3つの種類があります。
このうち①自筆証書遺言は文字どおり故人が生前、自筆で書く遺言書であり、最も一般的な遺言書といってよいでしょう。
そして、自筆証書遺言は自宅のタンスや仏壇、重要なものを保管する箱などにしまっておくことが多いようです。
そのため、故人が亡くなったときに遺言書の保管場所がわからなくなってしまったり、複数の遺言書が見つかったり、誰かが遺言書を隠したり書き換えたり、さらに、遺言書があっても文面に不明瞭な記述があったりと、遺言書の役割を果たしていないと判断できるケースも多々あります。
そのような事態を少しでも解消するため、法務局という公的機関で遺言書を保管する制度が創設されたわけです。検認は不要。
紛失や改ざんを防ぎ、相続手続きの円滑化につなげる自筆証書遺言でも、法務局という公的な機関が保管すれば、遺言という故人の最終意思が実現される可能性が高まりますし、それは相続手続きの円滑化にもつながります。また、全国一律の対応ができることになり、紛失や改ざんを防ぐこともできます。