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改正相続法

遺産分割協議の前に、預貯金を払い戻せる「仮払い制度」

遺産分割に関連する改正の1つに、「遺産の分割前における預貯金債権の行使」というものがあります。

 

従来は遺産分割協議の前は各相続人が単独で故人の預貯金からお金を払い戻すことは認められてはいませんでした。それが今回の改正により、一定の条件のもとで一定金額まで払い」が認められるようになりました。

 

「共同相続」を前提とした相続人の負担を軽減

 

この改正は、「相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払いのほか、相続する債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払い戻しが受けられる制度を創設する」というものです。

 

この「遺産分割前にも払い戻しが受けられる」というのが、「仮払い制度」ということになります。

 

相続人の資金需要に対応する2つの仮払い制度

 

この仮払い制度として創設された内容のうち、1つは、「家庭裁判所に対する仮分割処分の要件を緩和する」というもので、従来の制度について要件を緩和し、利用しやすくしたものです。もう1つは、まったく新しい制度として、次のとおり創設されました。

 

・金融機関ごとの金額による上限を設けたうえで、一定割合の預貯金の払い戻しを、各相続人が単独で金融機関の窓口で受けられるようにする。

 

この「金額による上限」については、下の例のように計算します。

 

相続を開始した時の預貯金の額(金融機関ごと)×3分の1×その払い戻しを行う共同相続人の法定相続分

 

例えばある銀行の口座に故人の預貯金が900万円あり、共同相続人が配偶者と子2人で、子が仮払いを受けようとする場合、「900万円×3分の1×4分の1」で、75万円が払い戻しできる額となります。

ただし、上限額は金融機関ごとに判断することになるので、故人が1つの銀行に複数口座をもっている場合には、それらを合算した金額をもとに上限を算出することになります。なお、払い戻しを受けた預貯金については、遺産を一部分割により取得したものとみなされます。